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時代を読む

フィレンツェ名門貴族の処世術

  1. 発言に注意
    君が口を開くとき、必要でもないかぎり、他人を不愉快にさせるにちがいないようなことは決して口にせぬように注意をはらわなければならない。というのは、時と場所とをわきまえずにそのような発言をすれば、それは君自身にはかり知れぬ害をもたらすからである。この点については、じゅうぶん気を付けるように、と言っておく。というのも、用心ぶかい人間でも、このことではずいぶん失敗するものだからである。また、これを避けるのは至難のわざである。けれども、それがどれほどむずかしいことであっても、それを乗りこえる方法を知っている人にとっては、それだけ大きな報いがあるというものである。

  2. 他を非難する方法
    もしやむにやまれずに、あるいは腹にすえかねて、どうしても他人にむかってひどいことを言わなければならないようなときには、すくなくてもその当人だけの気にさわることを口にするだけに止めておくように注意したまえ。たとえば、もし君が特定の個人を攻撃するばあい、その人物の祖国や親類のことを悪くいってはならない。それというのも、たった一人の特定の人間を攻撃しようとして、多くの人々を怒らせるなど愚の骨頂だからである。

  3. 友人の効用
    友人ほど貴重な存在はない。したがって友人をうる機会はけっして失ってはならない。人間というものはいつも互いに交渉のあるものなので、君が思いもおよばない時や場所で、友人は君を助け、敵は君に害を与えるものである。

  4. 時代に合うこと
    たとえ君が、すべてのことがらを慎重(ブルデンツイア)ニ力量(ヴィルトウ)に帰して、できるだけ運命(フォルトウナ)の力を排除して考えようとしても、君は少なくとも以下のことはみとめなければならない。つまり君の自負する力量や資質が尊重されるような時代に、たまたま出くわして生を享けているという事実のおかげを大いにこうむっていることを知っておかなければならない。

  5. 好機到来
    機が熟したときにものごとを行えば、首尾よく成就するものであるが、それはどうかといえば、ほうっておいてもひとりでに良い方向にむかっていくものである。ところが同じことがらでも、時期尚早なのにことを行うと、失敗におわるだけでなく、たとえ機が熟するようになっても、成功はおぼつかなくなることがよくあるものである。だから、がむしゃらに突進していってはいけない。事を急いではならない。機が熟して、好機が到来するまで待つように。

  6. 長期の見通し
    現在おこっていることがらを手がかりとして、将来のことがらを論述しようとする人がいる。事情にくわしい人が書いていれば、これを読む人にはいかにももっともらしく思われることだろう。ところが、これはぜんぜんでたらめなのである。というのは、これらは論理的につながっていて、次々と結論が導き出されるので、一つの前提がまちがってれば、それから導き出されるすべての立場はぜんぶ駄目になってしまうからである。そしてどんなにとるにたらぬ細かい情況の変化のどれをとりあげてみても、それは結論を変えさせてしまう働きをするのである。だから、この世の中のことがらというのは長期の見通しでは判断がつくものではなく、日一日と判断を下して態度を決めていかなければならないのである。

  7. 歴史の進行速度
    一四五七年に書かれたある覚え書きを見ていたら、一人の賢明な市民が次のように言っているのが目にとまった。「フィレンツェが公債(1)を廃止するか、公債がフィレンツェを破滅させるかどちらかだ」と。つまり、フィレンツェは公債のもつ重要性を奪い去らなければならない。さもなければそれはますます膨張を重ねていって収拾がつかなくなってしまうだろうということを、この市民はいみじくも見ぬいたのである。ところが公債の発行は予測されたような破局を生むこともなく、これまでずっとつづいてきた。つまり実際には、かつてその市民が考えたより以上に、はるかにゆっくりしたテンポで進んできたのである。

    一三四七年にはじまったフィレンツェの国債。はじめは五パーセントの配当を行っていたが、好況の折には利率が十五パーセントにまでひきあげられた。そして有価証券として毎日相場が立ち、時価でとりひきされた。十五世紀にはいり、ようやく政策のひずみが出はじめ利息の支払いをするために新しい公債を発行しなければならなかった。そして国家財政の負担となったのである。ために持参金公債というものまで思いつかれて実行に移された。なお、公債の事務を処理したUfficial del Monte とよばれる事務局は、十五世紀末には大蔵省の役割を果たしていた。グィッチャルディーニは一五一三年にその役職に選ばれている。

    フィレンツェ名門貴族の処世術
    『F・グィッチャルディーニ』
    講談社学術文庫 より

    16世紀にかかれたものです。家訓として読ませるために書き溜めたものですが、現代でもだいぶ参考になりますね。
    たまに私はこの本をパラパラめくって読んでます。いいこと書いてあるんですね。(実はこのとおりできないのが問題でして・・・。(笑))


Have a nice weekend!

[2004.09.17]

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