ホーム > 知っておきたい税務キーワード > 第3回 相続
日々の会計業務から非日常的な経営局面まで、会計人・経営者であれば、知っておきたい戦略税務の今を辻・本郷税理士法人の公認会計士・税理士が解説します。
「相続」というと一般的になじみの深い言葉かと思いますが、「相続税」となると「?」という方も多いかと思います。「親の財産を相続すると相続税がかかるんでしょ」と漠然と思っている方が大半ではないでしょうか。
「4.2%」という数字があります。実はこれが亡くなった方の数に対する相続税を支払った方の割合なのです。つまり、100人の方が亡くなって相続税を支払う人の割合は約4人ということになります。相続税は「お金持ちの税金」といわれる所以は、この割合の低さに関係しているといえます。
すなわち、相続税には基礎控除というものがあり、その金額は1,000万円×法定相続人の数+5,000万円により計算します。例えば、父母と子2人の4人家族で、父が亡くなった場合、法定相続人は、母と子2人、合計3人となりますので、基礎控除は8,000万円となります。
この8,000万円という高額な基礎控除を超える財産を持っていると、原則として相続税の納税が発生することとなるため、実際に相続税を払う人は少なかった、ということがいえます。
しかし、平成23年度税制改正大綱には、この基礎控除を引き下げるという案が盛り込まれていました。具体的には、600万円×法定相続人の数+3,000万円とする改正案です。法定相続人3人の例でいうと、基礎控除は4,800万円となり、4割も基礎控除が引き下げられ、相続税のかかる方が増えるという内容です。
つまり、今後は相続税のかかる方が増えることが予想されますので、「相続税の対策が必要になる」ということとなります。
相続税の対策としては、いくつかありますが、今回はその中でも「生前贈与」を紹介します。
「生前贈与」とは、その名のとおり、生前に親の財産を次世代の方に贈与するというものです。贈与をして、そのもらった方のもらった金額が年間110万円(基礎控除)を超えると贈与税がかかります。
110万円前後の金額を毎年贈与して相続税対策をしている方は多くいらっしゃいます。仮に毎年3人の子に110万円ずつ10年間贈与すると、110万円×3人×10年間で3,300万円もの財産を生前に移転することができます。相続税の税率が最高税率50%の方は、1,650万円の相続税の減少が見込まれることになります。
また、超富裕層といわれる多額の財産をお持ちの方には、さらに効果的といえる方法があります。それは、将来の相続税のときに適用される税率よりも、低い贈与税の税率で、110万円よりももっと多額の財産を贈与するという方法です。すると、支払う贈与税よりも、将来の相続税の減少する金額の方が多くなりますので、相続税対策としては有効であるといえます。具体的には、下記をご参照ください。
父に対する税率が相続税の最高税率であることを前提にすると、上記の方は1,000万円の贈与をして231万円の贈与税を支払ったとしても、500万円の相続税が減少していますので、結果として269万円得をしたことになります。110万円ずつコツコツと贈与することも効果的ですが、もっと多額の財産を持っている方には、このような方法もあります。
また、この相続税の税率を知るためにも、相続対策を考えている方は、相続税の試算をしておくと良いでしょう。
また、生前贈与のなかでも、「孫へ贈与する」という方法があります。贈与の対象としては、配偶者や子が一般的かと思いますが、あえて孫へ贈与します。すると「世代飛び越し効果」といい、通常では、父→子→孫と、2回の移転と2回の課税がされるところが、孫へ贈与すると、父→孫となりますので、1回の贈与税の課税だけで済むことになります。
前回の「知っておきたい税務キーワード」でご紹介したとおり、贈与税の税率構造の見直しが検討され、贈与税が軽減される可能性がありますので、孫への贈与はより効果的であるといえます。
そのほかにも、ケースバイケースにより相続税対策の方法はいろいろありますので、ご検討してみてはいかがでしょうか。